ベイン・アンド・カンパニーというアメリカのコンサルティング会社のパートナーであるクリス・ズックとジョームズ・アレンが書いた『Repeatability(リピータビリティ)』。
リピータビリティとは再現可能なビジネスモデルを構築することです。
2012年発行の少し古い本ですが、知人から薦められて読んだら、これがとても勉強になりました。
自分の備忘録としてまとめましたので、参考にしていただけると嬉しいです。
Repeatability(リピータビリティ)で再現可能モデル構築する3つの原則
この本を読むまではビジネスモデルを考えるときに「魅力的な市場を選ぶ」ことが大切だと思っていました。
しかし、著者の調査では、長期的な成功をおさめるためには「魅力的な市場を選ぶことではなく、業界内の競合他社との相対的なパフォーマンスの差による」ことが大きい要因になるということかわかりました。
つまり「どこで戦うか」は大切じゃない。それよりも「どう戦うか」の方が大切なんです。
本書はこの「どう戦うか」ということを3つの原則に落とし込んで、かなり具体的に書いてくれています。
その3原則を紹介します。
原則その1:明確に差別化された強力なコア事業
この「差別化された強力なコア事業」をもつことは成功への絶対要件とされています。
ここで言う「コア事業」というのは、ただ重要業務を遂行することではありません。
市場において競合他社より相対的に優位に立てる資産やコンピテンシー、ケイパビリティがコア事業として定義されており、コア顧客に提供されているサービスや競合企業に勝てるコスト構造といった要件です。
原則その2:絶対に譲れない一線の顯示
原則1の戦略の有効性を裏づける指標をもつこと。
そしてこの指標は戦略と現場の行動を結びつけるものであること。
つまり経営者が決めた戦略上もっとも重要な原則を現場で実行に移す社員に理解してもらい、単純な行動規範に置き換えることができるものです。
これによって「戦略」を「行動」へ転換することができるようになります。
したがって、「譲れない一線」は曖昧なものではなく、行動様式を変え、意思決定に影響をおよぼし、報酬のあり方を定義づけるほど具体的なものまで落とし込む必要があります。
原則その3:循環型学習システム
企業に競争優位性があってもそれが長期的に続くとは限りません。
著者の分析によれば、経営の行き詰まりや停滞は、突発的に起こった大打撃によるものではなく、長年にわたって変化の兆しや予兆への対応の遅れによるものと判明したそうです。
つまり組織の学習能力不足が原因です。
したがって、学習・意思決定システムを構築していこうということです。
ここでは最近話題になっている「OODAループ」が紹介されています。
観察→情勢判断→意思決定→行動を繰り返すというフレームワークです。
ご興味があれば専門書をあたってください。
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再現可能モデルが失速する2要因
強いビジネスモデルであっても失速することがあります。
それは主に2つ要因によるそうです。
コア事業のフォーカスを失う
早い話があっちこっちに手を出してしまうことですね。
成長企業にありがちな多角化をしてしまう。
最近であればライザップがそうでした。
コア事業に無関係な会社をどんどんM&Aして赤字に転落しました。
常に客観的に自己点検して、コア事業を失わないようにしましょう。
迅速な適応に失敗する
「機を逸する」。
これは日本企業に多いパータンです。
僕もサラリーマン時代に海外の人に言われたことがあります。
「あなたの会社は意思決定が遅すぎるので、もう他社と話を進めている」と。
また、単純に意思決定が遅いだけではなく、企業が成長するに伴って業務プロセスが複雑化することも要因になっているようです。
- 社内会議
- 社内資料や報告書の作成
- 意思決定プロセス
- 社内政治
・・・などなど事業がどんどん複雑化する。
本書で「優れたマネジメントがなければ、組織は必ず秩序から無秩序へ向かう」と書かれているように、複雑化を抑止して単純化を維持するためにはマネジメント層の関与は必須事項です。
ドキッとした言葉
「変わらなければならない、ただどう変わるべきかわからない、変わってうまくいく確率も高くない、結果として変わらない道を選び、あるいは変わることを先送りして、大失敗はないもののずるずると業績は悪化していく」
これは「日本語版まえがき」で翻訳者が書いた言葉です。
まさに衰退する企業のパターンを端的に現していますが、これは個人にもあてはまると思いました。
まとめ
本書は企業経営をターゲットに書かれたものですが、主語を置き換えれば、書かれていることすべてが個人にもあてはまります。
儲かりそうな職種や業界を選ぶことよりも、そこに個人としてのコアをもって適応していくことが大切だと再認識できました。
再読間違いなしの良書です。
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